AIに仕事を任せていると、担当していたAIをいつでも開けるとは限らない。
最近、外部の作業担当が開けないことがあった。長いCodexのタスクが、一度だけ別の古い依頼へ混線したこともある。原因は分からないし、ここで決めつけるつもりもない。
ただ、ひとつ困ったことがあった。
そのAIがいないと、仕事そのものが止まったように感じたことだ。
会話の続きを探すだけでは、仕事は戻らない
最初は、AIとの会話を長く残しておけばいいと思っていた。
前に何を相談したか。どんな順番で作業したか。どこで迷ったか。そういうものが残っていれば、同じAIを開けなくなっても続きから始められる気がした。
でも、会話を保存することと、仕事を再開できることは少し違う。
長い会話の中には、その時だけ必要だった相談や、採用しなかった案も混ざっている。今の状態と、途中の状態も混ざる。どれが正式な情報で、どれが作業中の考えなのかを、もう一度確かめなければならない。
会話が残っていても、次に何を読めばいいのか分からなければ、また最初から説明することになる。
そこで、会話の続きを再現するのではなく、別のAIが同じ役割を安全に再開できるための地図を作ることにした。
作ったのは、AIの記憶ではなく役割の地図だった
研究所OSのMac側に、AIワーカー役割復旧地図を置いた。

これは、新しく「正本」を増やすものではない。ここでいう正本は、その情報を確かめる時に基準にするファイルや場所のことだ。研究所のルールや実験台帳を置き換えるものでもない。必要な正本と実物へ戻るための、薄い索引として作っている。
地図に入れたのは、たとえば次のようなものだ。
- その担当AIは何をする役割なのか
- 仕事を始める時に、どの正本と実物を読むのか
- どこまでが担当で、何をしてはいけないのか
- 本人事実や数字が必要な時、どの原典へ戻るのか
- 判断ができない時に、どこでSTOPするのか
- Codexや管理人へ戻す条件は何か
- 作業を終えた時のDONE(作業完了)、PASS(確認合格)、NO_CHANGE(変更なし)の意味
大事なのは、AIの個体を再現することではない。
同じ名前のAIをもう一度作ることでもない。
担当が変わっても、正しい場所を読み、同じ境界で止まり、必要なら同じところへ戻せることを目指した。
最初に読む順番を残した
復旧する時に迷いやすいのは、情報がないことより、情報が多いことだった。
研究所の憲法を読むのか。サイトの方針を読むのか。実験台帳を見るのか。前回の終了報告を見るのか。公開中のページを先に見るのか。
そこで、仕事を始める前の順番を決めた。
まず役割復旧地図を読む。次に、研究所の共通方針と対象サイトに関係する正本を見る。その仕事に関係する実験だけ、実験台帳で確認する。最後に、必要な範囲で終了報告と公開実物へ戻る。
報告書に書いてあるから現在もそうだ、と決めつけない。地図より公開実物が新しければ、公開実物を読み直す。本人のことが必要なら、AIの要約ではなく本人の原文や直接の回答へ戻る。
この順番があるだけで、別のAIがいきなり古い会話や古いメモだけを頼りに走り出すのを防ぎやすくなる。
途中の状態も、完了と混ぜない
今回、入口の現在地には途中スナップショットも残した。
これは、その時点で確認できたことと、まだ終わっていないことを分けるための記録だ。全体完了や、Gitの状態、外部サービスの完了を意味しないことも書いている。
こういう記録は、見た目だけなら少し中途半端に見える。
でも、途中のものを完了したように書く方が危ない。
「どこまで見たか」と「まだ見ていないか」が分かれば、次の担当は残りだけを確認できる。逆に、途中状態を完了報告として残すと、次のAIはもう済んだものとして読み飛ばしてしまう。
復旧に必要なのは、きれいな物語ではなく、再開地点が間違っていないことだった。
AIが覚えていることより、次に読む場所を残す
AIは、前の会話を覚えているように見えることがある。
でも、その記憶がいつまで使えるのか。別のスレッドや別のAIでも同じように出てくるのか。今の正本と食い違っていないか。こちらからは分からないことがある。
だから、「覚えている」と言われたことだけを復旧の根拠にはしないことにした。
代わりに、次の担当へこう渡せるようにする。
この地図を読む
↓
関係する正本と実物へ戻る
↓
対象を一つに絞る
↓
変更せず、まず読み取り確認する
↓
不明ならSTOPして管理人へ戻す
これは便利な自動化ではない。けれど、AIが変わっても残る。
管理表を増やしたかったわけではない
こういう話をすると、また新しい台帳やデータベースを作るのかと思われるかもしれない。
自分も、最初は情報をきれいに集めることに気持ちが向きやすかった。担当AIごとに会話を保存する。毎日の作業を一覧にする。すべての引き継ぎを記録する。やろうと思えば、いくらでも増やせる。
でも、管理するための仕事が増えたら、AIに任せた意味が薄くなる。
今回は、すでにある入口、正本、実験台帳、公開実物へ戻る順番と、役割の境界だけを薄く示した。通常の作業記録や、採用しなかった会話まで全部保存することはしていない。
以前、AIに日報を書かせるのをやめた。入口ではなく、出口だけそろえた話を書いた。今回も考え方は近い。AIがどれだけ動いたかを集めるより、人間の判断が必要なところだけ見える方が、今の自分には続けやすい。
仕事は、担当AIがいなくても残せる
担当AIが開けなくなった時、最初に必要なのは、そのAIの人格や癖を再現することではなかった。
何をする仕事なのか。何を正本とするのか。どこから読み始めるのか。何をしてはいけないのか。迷ったら誰へ戻すのか。
そこが残っていれば、別のAIでも、少なくとも安全な読み取りから再開できる。
AIが覚えているかどうかは、こちらでは完全に管理できない。
でも、Macに置いた正本と、次に読む順番は、自分で確認できる。
忘れても、止まっても、担当が変わっても、仕事が最初から消えないようにする。
そのために必要だったのは、会話を全部残すことではなく、戻る場所を一枚にすることだった。
今はまだ、別のAIへ渡した時に毎回同じように再開できるかを試している途中だ。それでも、復旧地図を作ったことで、「このAIがいないと何もできない」という感じは少し薄くなった。
AIを使うほど、仕事が増えることがある。
だからこそ、AIの記憶を増やす前に、仕事が戻れる入口を残しておく。今の自分には、そのくらいの仕組みがちょうどいい。
これは、2026年9月5日時点での研究所OSの実作業と考え方をもとにした記録です。AIのサービスや保存状態は変わるため、特定のAIが常に同じように動くことを保証する記事ではありません。

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